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2009/07/31 (Fri) 03:46
第一話「出会いとはじまり」

 少年は困っていた。

(おっかしいなぁ、この辺のはずなんだけど……)

 手にした地図をぐるぐると回し、首を捻っている。ぼりぼりと黒髪の頭を掻いてみるが、やはりわからない。
 と、目の前を力なく横切った男の子が、何かを落とした。

(手帳? 丁度いいや、ついでに道も教えてもらおう)
「おーい、落し物だぜ、えーと『早乙女歩』くん」
「え……?」
「ほら、生徒手帳……っておいおい、どうしたんだよその顔。喧嘩か?」

 ゆっくりと首を横に振る歩。背が小さく、気の弱そうな、いかにもいじめられっ子という見た目だ。
 どうした、と言われた顔は確かに傷だらけで、擦りむけた頬が痛々しい。よく見ると服もところどころ泥に汚れている。
「どうしたんだよ、言ってみな」
「カードの勝負に、負けて……」
「カード?」

 堪えていた涙が溢れ出る。
 それを拭うために持ち上げられた歩の手を見て、歩とは反対に少年は楽しげな声を上げた。

「おお! それ、ガンダムウォーじゃないか!」

 握り締められたカードの束、モビルスーツのイラスト。
 紛れも無くガンダムウォーのデッキだった。
 しかし喧嘩ならともかく、カードの勝負でこの怪我、この様子――普通じゃない。
 少年の目が細められ、その声が重みを増した。

「何があった」


□ □ □


 10分後、二人は街のカードショップ「ジャンク×ジャンク」にいた。

『――それにしてもぼろ儲けだったな』『その通りだ』『まったくです』

「いた!」
「あいつらか」

『まったくいいアイディアだぜ。弱そうなやつらにレアカードを賭けた戦いを“ちょっと暴力的に約束”して勝つ。これだけでどんどんカードが巻き上げられるんだから、なぁ?』『その通りだ』『まったくです』

 入り口から様子を窺うと、そこにいたのは黒い学ランに身を包んだ三人組だった。中肉中背型と細身長身型、そして低身長力士型と見事な凸凹三人組だ。不気味なことに、それだけ違う体型なのに三人は同じ顔をしている。得意げに話すのは中肉中背の男、どうやらリーダー格。そしてそれに同意する二人。

「あの普通っぽいのが長男、星野一郎。モヤシが二郎、ふくよかなのが三郎だよ。でも本当に行くの? やめといたほうが……って、あ、ちょっと待――」
「いきなりですまないが、こいつにカードを返してやってくれないか」

 止める間もなく、少年は真っ直ぐ一郎に近づいた。
 そこに先ほどまでの明るく気さくな少年の姿はない。有無を言わさぬ物言い。

「何の話だ? なあ?」「その通りだ」「まったくです」
「……お前らが無理やり戦わせて、巻き上げたカードを返せと言っているんだ」

 しらばっくれる三人、悪びれた様子もない。一郎の口にはうっすらと笑みすら浮かんでいる。が、その目は笑っていない。
(やばいよ……あいつらメッチャ睨んでるよ……)

「俺たちの強さに敬意を表して、『献上』してくれただけだ、なあ?」「その通りだ」「まったくです」
 調子に乗る星野兄弟。一郎が自然と饒舌になる。
「お前も『献上』してくれるなら、貰ってやってもいいぜ。なあ?」「その通りだ」「まったくです」

――――ブチッ。

(ぶち?)
 そのとき、歩は何かが千切れる音が聞こえた気がした。目にもとまらぬ速さで、少年が一郎の襟首を掴み上げる。そしてもう一つの拳をギリギリと握り締め、振り上げていた。

「だっ、駄目だよ! 暴力なんて、それこそ……それこそこいつらと同じ穴のムジナだよ!」
 歩が彼の腕に抱きつき止める。
「わかってる、わかってるさ……けどこんなやつら、同じガンダムウォープレイヤーとして放っておけないんだよ……!」

 噛み殺さんばかりの歯ぎしり。
 だがそんな少年の様子にも、星野兄弟は全く臆していなかった。それどころか、一郎は「ガンダムウォープレイヤー」と言う単語を聞いた途端、いやらしく目を光らせる。

(くっくっく……俺たちに喧嘩を売るとは、どうやらズブの素人らしいな。二郎、三郎やっちまおうぜ、なあ?)(その通りだ)(まったくです)
「「「まったくその通りだ! 暴力では何も解決しない。君もプレイヤーならば、ここは正当な勝負で話をつけようじゃないか!!」」」 

 大音響。星野兄弟の声が揃ったのだ。
 一郎は襟首の手を振りほどき、テーブルの上にデッキを置く。二郎、三郎によって広げられるプレイシート。一瞬で整う戦いの準備。

「「「さあ、ガンダムウォーを始めようじゃないか、なあ?」」」

「俺が勝ったら歩のカード、返してもらうぞ」
「「「君が負けたら?」」」
「有り得ないことは考えないことにしている」
「「「まったくもって生意気だなぁ。まあいい、君が負けたらデッキを貰おう!」」」
「好きにしろ」

 少年は背負っていたリュックから真っ黒なデッキケースを取り出した。
傍らに泣きそうな歩の顔。自分のカードのために、彼がデッキを賭けることになるなんて思っていなかった。

「こんなことになって、僕……僕……」
「おい、泣くなって。大丈夫、こんなやつらに負けやしねぇよ」

 にっこり笑う少年。そしてごしごしと歩の頭をなでる。
 と、そこで歩はあることに気づいた。

「そうだ、まだ名前……ぼ、僕、応援するから!」
「ああ」と少年も合点し、取り出したデッキをテーブルに置き、言った。
「俺は鉄(くろがね)、――鉄勇輝だ!」


つづく

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コメント

感想はこちらでよろしかったでしょうか?

ストーリー運びが王道的なパターンでいいっすね~
主人公は黒デッキでしょうか?対戦にも期待です。

>Y氏
おろ、まだ告知もしていないのに感想をいただけるとは、本当にありがとうございます!

そうですね、まずは王道で攻めて、アレンジはあとあと……と考えています。
次回からは対戦パート、ご期待に沿えるよう頑張りたいと思います。

あれ・・・1話と全然違いますね・・・
これは期待をせざるを得ないッ!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

ふむ、主人公はおそらく黒使い。
一口に黒と言っても様々なデッキが存在していますから…
どんなデッキを使うのか対戦、期待して待っています。

>takuさん
この前のような失態のないよう気をつけないと……
期待に応えられるよう、頑張ります

>恭蒼さん
最初はそれほど凝ったギミックは出せないかもしれません……気長に待っていただければ幸いです

このまえよりも目的とかそういうのがはっきりしてて、よかったと思うよ。

まぁ、この前のはプロローグだったし、解らなくて仕方なかったかもだけど。

そういや、この書き物のタイトルは決まってないのかな?

つまらん

なんも成長してないな
センスないよ

>名無しさん(二つ前の)
まだ決まってません……のんびり考えていきたいと思っています。

>名無しさん(一つ前の)
そんなものを全部読んでいただき、ありがとうございます。どんなところが悪かったか、教えていただけると喜ばしい限りです。
よろしくお願いします。

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