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2009/08/01 (Sat) 13:16
第二話「ドムと三兄弟」

 
試合前のデッキシャッフルで、牽制は既に行われていた。

「「「吠え面かくなよ、なあ?」」」
「そっちこそ」
 
 睨み合い。視線はどちらも相手の心を刺し貫かんとするもの。正式な試合では有り得ない行為だが、これは憎悪の支配する私闘。

(闘いはもう始まっているんだ……!)

 歩はこの時点で自分は負けていたんだと実感した。三人の嬲るような視線に屈服していたのだ。蛇に睨まれた蛙のようでは、試合で全力は出せない。だが炎のような勇輝の視線は全く揺らいでいなかった。

 コイントスにより先行が勇輝に決まる。
 そして試合が始まる。  
 まずは勇輝のターン、ドロー。
「俺は黒基本Gをセット、ターンエンド」

「「「では俺のターン、ドロー!」」」
「んな……」

 異様な光景だった。星野一郎がプレイしているのはいい。
 だがその両隣に立つ二郎と三郎はどういうことか。ドローしたカードを相変わらず三人で宣言している。

「おいおい試合が始まってからも三人一緒かよ」
「安心しろ」「俺たち二人は」「宣言以外は何もしない」
「なんでもいいけどよ……」
「「「では、緑基本Gをセットする。ターン終了だ」」」

 まずは両者とも、静かな立ち上がり。先ほどの睨み合いが嘘のような静寂さだった。
 すぐに勇輝のターンになるが、相変わらず黒基本Gを出すだけ。

「「「随分と悠長だなあ?」」」
「お前らこそなんもしてなかったじゃないか。のんびりした性格なのか?」
「「「どうかな?」」」

 お互いに腹の探りあい。ピリピリとした空気が張り詰める。
 だが次のターン、予測は脆くも崩れ去った。
 それは、一郎が緑基本Gをプレイしたところでのことだった。

「「「俺は《ファットアンクル》をプレイ、本国から三枚めくり合計国力2以下のユニットを場に出す。俺が出すのは……《ドム(マッシュ機)(19th)》だ」」」

「――黒い三連星?!」

 星野兄弟は続けてカードを出す。その動きによどみは無い。
 顔には笑み――ただひたすらに優位に立っている者の、人を見下した笑み。
(得意な流れか……!)

「「「血祭りにしてやるよ、なあ?」」」
「勝った気になるのはまだ早いんじゃないのか」
「「「まったくその通りだ。だがまだまだ、こんなもんじゃないぜ……続けてオペレーション《イレギュラー》をプレイし、テキストを使用。手札のユニットを通常のコストを支払ってリロールインさせる――出すのは《ドム(ガイア機)(19th)》だ」」」

「まずいよ……みんなあのスピードにやられたんだ!」
 歩の不安な声。心なしか勇輝の額にも汗が滲んでいるように見える。
 ――ぞくり。
 背筋を駆け抜ける悪寒。そしてそれは――

「「「《ドム(オルテガ機)(19th)》をプレイ!!」」」

 ――現実のものとなる。
 場に揃う三体の黒い機体。禍々しく漂う気配は星野兄弟のものか、カードのものか。
 幸いリロールしているのは《ドム(ガイア機)(19th)》だけだが、慰めにもならない。

「「「さあ、戦闘フェイズに入ろうじゃないか、なあ?」」」

 単騎で地球に出撃するドム、そのサイズこそ大したこと無いが、勇輝の場がまっさらなので躊躇いもない。
 そして小さかったはずのドムが牙を剥いた。

「「「《ドム(ガイア機)(19th)》の効果、本国から5枚まで見て、『黒い三連星』であるキャラクター一枚をセットする……いたぜ。俺が出すのは《ガイア(19th)》だ!」」」

(なんて引きをしやがる!) 
 勇輝は舌を巻いた。驚異的な運と言うほかない。展開の仕方が、星野兄弟の運が常人のそれとは一線を画していることを示している。あっという間にドムのサイズが5/0/4まで膨れ上がる。

「鉄くん気をつけて! あいつら引きの強さも半端ないんだ!」
「「「さあ、本国に5点のダメージだ。くくく……次のターンはこんなもんじゃすまないぜ、なあ?」」」
「くっそ……!」

 劣勢だ。勇輝のターンが始まるが、浮かない顔は変わらない。戦況は完全に星野兄弟に傾いている。

(ようやく三ターン目……時間が流れるのが、こんなにも遅いなんて……!)

 歩は気が気でなかった。あと2ターンもドムに蹂躙されたら勇輝の敗北は確実。歩のカードどころか、勇輝のデッキまで奪われてしまう。それだけは、なんとしても避けたかった。

(巻きこまなければよかった……)

しかし勇輝は歩の不安を見抜いたように振りかえった。

「ビビるな、勝つって言ったろ!」
 
 勇輝は3枚目の黒基本Gを出し、ようやくG以外のカードを手札から出す。

「俺は《情報の把握》をプレイする。手札を2枚見せ、その中から相手が選んだカード1枚を廃棄する。その後カードを2枚引く」
「「「俺たちに手の内を見せるだと……舐めているのか、なあ?」」」
「いいから黙ってカードを選べ」

 見せたカードは《ゼク・アイン(ジョッシュ・オフショー機)》と《ゼク・アイン(トッシュ・クレイ機)》。両方ともがデッキの主力のはず。しかし勇輝の目に迷いは無かった。

(罠か……? いや、ブラフだ。この選択肢に意味など無いな)
「「「……選ぶのは《ゼク・アイン(ジョッシュ・オフショー機)》だ。除外されちまったらドムたちのチーム効果も意味無いからなあ、怖い怖い」」」

(な、なんで《ゼク・アイン(トッシュ・クレイ機)》を選ばないんだ?!)

 歩の疑問は当然のものだった。回復の可能性さえ潰してしまえば、星野兄弟の勝利は磐石なものになるはずなのに。
 だが一郎は先ほどの《ドム(ガイア機)(19th)》のサーチ効果によって知っていた。
 次のターン、自分がオペレーション《間断なき砲火》を引くことを。
 一郎の口許が切り裂かれたように広がる。

(地獄はこれからだぜ……なあ?)


つづく
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